まったく手ゴワイヤツだったぜ
               まったく手ゴワイヤツだったぜ
 
KITAさん作
原作「ルパンの法則」で、白毛の元を訪れた次元。
白毛の投げつけた大量のナイフに間一発逃げ出したものの、避け切れなかったのか次元の服の裏側がナイフでドアに縫い付けられ、そこに残されます。
昆虫標本みたいに(笑)
 
実際には決してありえない結果なのだけど、モンキーさんが描くと本当にありそうな気がしてきます。KITAさんがオリジナルで描かれたこの次元のポーズも、カクカク折れ曲がった手足も、大口から直角に飛び出す舌も、典型的なモンキーさん独自の造形。奇妙な世界が繊細に描きこまれた世界にしっくり馴染んで、全体にシュールで摩訶不思議な空気が醸し出されています。この絵が巧みだと思うのは、次元とドアの部分だけしっかり描きこんで後はスッと抜いてる事。二つのシュールな表現がより印象的に目に焼きつきます。
 
モンキーさんのこれらのシュールなアイデアが、果たしてご自身で考えついた物か、海外漫画に影響受けた物かは判りませんが、日本においては昔も今も、他に真似出来た人はいないように思います。これだけでモンキーさんの漫画だと判るのはすごい。この独特のアイデアや世界観、造形美はアニメでは難しい表現だというのもあるかもしれませんが、当初はアニメシリーズでも慎重に研究されてた作風が、時代が進むにつれて少しずつこの味わいが薄れて行ったのは残念です。ある画風や作風が流行ると全部右に倣えの世間に対して、モンキーさんが「今の若手の漫画家志望は、器用で上手いが皆絵や表現が同じ」と苦言を呈するのも判るような気がする。
 
ネタばれなので全部は書きませんが、白毛はこれで一応次元に手加減してる訳ですね。それでも一歩逃げ遅れたら死ぬ事が判ってるのに、次元を信じてあえてギリギリまで踏み込む。これは次元に「まったく手ゴワイヤツだったぜ」と女の前で本気で言わせる為でしょう。これで逃げ出せる次元も大した奴ですが(笑)「参った」というとき次元が帽子を抑える癖も私は好きだったりします。
PAST INDEX FUTURE