またねぼけて
                         またねぼけて
 
KITAさん作
「狂&狂」で、悪夢にもがくルパンを救う次元のさりげない一言のシーン。
KITAさんは原作のコマを別の角度から捉えて描くのが本当にお上手で舌を巻きます。
ルパンの突き上げた足、逆に折れ曲がる腕、猫背気味の次元の背中など、モンキーテイストの妙を知りつくした感があって「マモー編」などにハマりそうなアングルです。
 
夢の中で次元はルパンを殺そうとします。
これは、ルパンが漠然と抱えてる不安や恐怖の現れかもしれません。
 
『親密に近づく者は、全て敵だと疑え。
お前が好きなのではなく、目的は「ルパン帝国」の財産と権力だ。
誰にも心を許すな。油断すると殺られる』
 
という深層心理に巣喰う猜疑心と強迫観念。
一歩間違えれば、まるで太宰描くところのディオニス王。
夢の中で次元を殺してしまった時ルパンは錯乱状態で号泣しますが
友を殺した事だけでなく
 
「次元でさえも信じてはいけなかったのか」
 
という孤独も怖れていたのではないかと思います。
 
 
 
 
KITAさんは
 
「この話の次元は、ルパンの「喪失への恐怖」と、それを正気に戻す役割として表されてる」
 
と分析されてますが、鋭い見方だと思いました。
 
「次元が殺される」
 
と聞いた時のルパンの焦り方も、半端じゃなかったですもんね。
自信満々に見えるルパンの、強さ故に生じる人間らしさ。
その弱い心は「現実」では決して露わにする事が許されない。
だから「夢」に現れる。
 
 
例え世界中に部下がいても、きっとルパンには心から信頼して身を置ける居場所が、次元の傍にしかないのだ、と思います。夢魔の次元はルパンの不安と恐怖に揺れる本心に気付かず彼を「強い」と称していますが、それはルパンの弱い部分の居場所の喪失でもあるのでしょう。
 
ところで私は「次元考察」で、次元のルパンに対する狂気とさえいえる愛情の深さは「人殺し稼業で容易に人に愛を向けられない次元の、反動のカタルシス」ではないかと位置づけてるのですが、ルパンの女に対する異様な性欲もその類に思います。快楽が彼の不安を忘れさせてくれるというのもありそうですが、多分人を身近に寄せられない「人肌への渇望」もあるでしょう。彼の見るガイコツは「何の理屈もいらず密着出来る人肌を失う」ことでもあります。あれは次元喪失と併せて、究極のルパンの不安を象徴した夢だったのかも。私は昔これを読んで、モンキーさんが薬やってるんじゃないかと思った事もあります^^;
 
次元とルパンは表面上、いかにも楽しげな気のいい相棒同士ですが、こうした光の裏にある影の部分を感じさせることで、彼らの何気ない日常の言動やたまに見せる強固な絆の理由が、より説得力を持つように思います。
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